2009年5月、NGNサービス創造研究部会が発足した。佐々木茂則理事長からの4つの諮問事項を受け、およそ半年間にわたって研究部会を開催し、論議を重ねてきた。この間の論議を踏まえ、諮問事項に対する答申を行うとともに、座長の一條和生教授による中小企業とICTに関する提言を添えて報告する。
NGNは、日本の従来の基幹ネットワークである電話網をIPネットワークに切り替えるものであり、極めて影響の大きいものといわれている。
サービスが開始された2008年当時は「スモールスタート」といわれ、その意義を重視する意見は少数であったが、エリア拡大とサービス拡充に伴い、ホームユースではIPTV視聴、インターネット接続などで需要が増えており、ビジネスユースでも、企業情報通信ネットワークに採用したり、顧客向けのネットワークサービスに活用する例が増えている。
日本の多くの企業ネットワークシステムの構築・運用・保守を事業の柱の一つとしている情報通信設備協会会員においても、NGNの特徴とその現状、そして今後の展望について、原則的な理解と通信ビジネスへの組み込みを検討する時期に来ていると考えられる。
当研究部会においては、NTT東日本の藤田委員の提起(委員レポート①参照)を中心にして、この諮問事項1について、全委員が分析を行い、レポートを行った。そして、様々な角度からの論議を行った。
その結果、次のようなことが確認された。
諮問事項1での「NGNの特徴とその現状について」の解明に踏まえて、次に、諮問事項2の検討に入った。現在NGNを企業においてどのように利用しているのか、また将来どのような利用が可能なのか、そしてNGNを利用した新たなサービス創造はどのようなものになるのかという論議である。そこで、現実の事例に踏まえつつ、将来どのような可能性があるのかを論理的・実証的に探る論議となった。
特に奥山委員、日野委員、中村委員からはNGN利用の可能性について提起がなされ、大村委員、浜村委員、上田委員からは事例分析と提案方法について提起された。(委員レポート② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦参照)
次のようなことが確認された。
NGNの特徴とそれを踏まえてNGNの利活用の方向性や具体例についての研究が進んだあと、顧客企業がNGN利用を促進し、事業を活性化するという点で、欠いてはならない事項として、セキュリティの問題が提起された。
特に松田委員からはセキュリティ機能への留意が行われ(委員レポート⑧参照)、土谷委員からはユーザーが利用するにあたって必要となるNGN対応機器の現状について、提起が行われた。
次のようなことが確認された。
NGN活用の前提は、企業においてLANが普及し、ITとネットワーク活用に対する垣根が取り払われることにある。企業ネットワークシステムの大前提となるLAN構築については、社会的に責任をもって推進できるところが十分に存在しておらず、企業ユーザーには不便をかけている。
この現状を打開するには、情報通信設備協会の働きが必要である。LAN認定制度のスタートはこうした情勢にかんがみたものであり、一層の推進が求められる。
この点については、各委員から推進意見が出されたが、特に大村委員、浜村委員、上田委員からは情報通信設備協会の飛躍に向けての不可欠のステップという観点から積極的・建設的な提起がなされた。(委員レポート⑤ ⑥ ⑦参照)
NGNビジネスの推進は極めて重要である。その場合のポイントは次の3点であると考えられる。
まず、NGNの登場は、電話からIPへの転換が国のインフラレベル、それも公衆回線レベルで起きているということを示している。
まだ、正式の年月は発表されていないが、NTTは長らく日本の基本網であった電話網の廃止を計画している。2012年とも2015年ごろともいわれている。
音声通話中心に設計されてきた電話網の廃止によって、電話、データ通信、映像、インターネットなど多彩なコミュニケーションを自在に可能とする新しいバックボーンネットワークとしてのIPネットワークへの移行がNGNという形でさらに加速度的に進んでいくことになる。
そこで、企業ネットワークシステムの構築を事業の機軸としてきた情報通信設備協会も音声中心から、NGNがカバーするあらゆる形態のコミュニケーションサービスをサポートしていかなければならない。それが特に企業においては、ユニファイドコミュニケーションという形で進もうとしている。
ユニファイドコミュニケーションとは、従来の音声を中心とした電話交換システムではなく、通信システムとITシステムをIPで接続することによって、通信と業務アプリケーションとを途切れなく利用できる新しいコミュニケーションシステムである。
現在は大企業中心に導入が始まっているユニファイドコミュニケーションがNGNの普及とともに中堅・中小企業でも広がる環境が整備されることになる。
NGNは、インフラから始まり企業システムにいたるユニファイドコミュニケーション社会、ユビキタスキタス社会の出発点になるともいえるだろう。
二番目の、FMCは、今や通信業界の常識となりつつあり、固定と移動の違いを意識しなくても最適なシステムを利用できることはユーザー企業のネットワーク活用の原点である。NGNはこれを加速するものであり、固定と移動を別々に考える時代の終焉を告げるものといえる。
現実の通信ビジネスにおいても、携帯電話がビジネスホンなどで構築する企業内線電話の基本的端末として不可欠となる時代に入っている。
三番目の、クラウド化、プラットフォーム化は、ここに来て急に浮上したかのように捉えられているが、実は、NGNと表裏一体のものである。NGNのような高品質のネットワークを何に利用するのかといえば、単なる音声通話だけに終始するはずはなく、むしろプラットフォームという情報配信基盤の上に様々なコンテンツ/アプリケーションを搭載し、それをNGNを通じてユーザーが自在に利用するというモデルの方がより適している。SDP(サービスデリバリープラットフォーム)と呼ばれる配信基盤に、コンシューマーから企業ユースまでを対象に多種多様なコンテンツ/アプリケーションを載せ、それをQoS、セキュリティ、信頼性、オープンインターフェイスを特徴とするNGNで安心して利用するという仕組みだ。これはクラウドサービスと本質的に同じ考えである。
研究部会でも例示された会計ソフトのSaaSサービス、BPOSなどを想定すると分かりやすい。こうしたサービスの登場は、従来の電話サービス中心で培ってきた技術とは異なる技術知識・ノウハウを提供者側にも、販売者側にも要求することになる。
この基幹ネットワークから企業ネットワークにいたる大きな変革の波は、永年、日本企業のネットワークシステムを手掛け、守ってきた情報通信設備協会会員企業にも大きなビジネスチャンスを提示するものであると同時に、一段の研鑽と飛躍を迫るものといえる。
一般に、通信系ディーラー/SIの強みは、電話システムに対する高い技術力と保守力であり、それは中堅・中小企業はもちろん大企業からも圧倒的な信頼を獲得してきた。その反面、弱みは、電話システム以外の分野への対応が遅れがちであり、とりわけコンピューター、ソフトウエア、無線技術、コンテンツ/アプリケーション、セキュリティなどへの取り組みを苦手とする傾向が払拭できない点と指摘されてきた。
NGNへの取り組みを契機に、こうした課題に挑戦することは、一方では未知で困難なプロセスを要求されるが、他方では飛躍と脱皮を実現するものとなる。
情報通信設備協会が位置しているICT市場の変化そのものを体現しているのがNGNともいえるわけで、NGNビジネスへの本格的取り組みは、ネットワーク、端末、サービスの各領域において、通信ビジネスの可能性を広げるものといえる。
こうした挑戦は、情報通信設備協会会員個々の取り組みで終始するのものではなく、IT業界を始めとする他業界、他団体との協力関係の構築が必要となる。
それによって、従来型ビジネス形態からの脱皮と飛躍が達成されるものとなる。まさにNGN取り込んだサービス創造型のビジネスへの積極的取り組みによって、新しい飛躍局面を迎えることができると言えるだろう。
最後に、情報通信設備協会がこれまで以上に、中堅中小企業の発展に貢献する団体であることへの期待を込め、研究部会で論議された協会への提言を摘記したい。
*集約及び取りまとめ:副座長 土谷宜弘 ((株)リックテレコム取締役編集統括部長)
| 役職 | 氏名 | 勤務先 |
|---|---|---|
| 座長 | 一條 和生 | 一橋大学大学院 国際企業戦略研究科 教授 |
| 副座長 | 土谷 宜弘 | 株式会社リックテレコム 取締役 編集統括部長 |
| 委員 | 藤田 周 | 東日本電信電話株式会社 東京支店 設備部長 |
| 奥山 進 | 日本電気株式会社 第二企業ネットワークソリューション事業部 パートナーシステム部長 |
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| 中村 龍太 | マイクロソフト株式会社 SMBディストリビューション統括本部 ビジネスデベロップメントマネージヤー |
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| 日野和麻呂 | 株式会社オービックビジネスコンサルタント開発本部 部長 | |
| 松田 治男 | 財団法人日本データ通信協会 情報通信セキュリティ本部 Pマーク推進室長 | |
| 大村 厚 | 富士ネットシステムズ株式会社 管理本部 経営企画部長 | |
| 濱村 修 | 協立情報通信株式会社 マイクロソフト推進事業部 課長 (会員企業) | |
| 上田 和也 | 英工電機株式会社 常務取締役 統括部長 (会員企業) |